ある職員の証言 ( 前編 )

私は以前、

町役場で働いていました。

 

 

 

 

世界がおかしくなったのは、

あの日が始まり、

だったのかも

しれません。

 

 

私は児童家庭課にいました。

 

「その日」は、

以前から「虐待」が噂されている児童

「のぼるくん」のアパートに、

訪問する予定日でした。

 

のぼる君に「何かあった」時は、

一時保護が出来るように、

県の児童相談所から、

応援の職員さんたちが

来てくれていました。

役場に設置した大型テレビが、

中東のどこかで、

昨日から、

戦争が始まった、と

騒いでいました。

 

でも、

私はそれどころではありませんでした。

 

私は児童相談所の方とあいさつすると、

すぐに出かけました。

私の中には、

内心、

不安があったんです。

 

「のぼる君は、危ないのでは?」

これは、

「命に係わるケースでは?」と。

DVがあるのは間違いありませんでした。

 

私達はすぐに出かけました。

父子家庭のその家に、

その日は珍しく

父親が、

いました。

 

普段は、

いつもいないのに、、、、

 

私達は、

父親が不在ならば、

ネグレクト(育児放棄)を理由に、

のぼる君を保護しよう、

そう決めていました。

 

父親に、

のぼる君に合わせてくれるよう

お願いしましたが、

 

「今はいない。明日ならいる。」の、

一点張りでした。

 

私には悪い予感がありました。

 

しかし、

何度も申し訳なさそうに「謝る」父親を見ていると、

哀れにも思えて、、、

 

児相は私に判断を

任せてくれました。

 

「明日また来ます。」

私はそう言い、

その日は、

帰ることにしました。

 

私は、

あの時、

取り返しのつかないことを

してしまったのです。

 

 

 

私は、

せっかく来てくれた児相の方々に

お詫びしました。

 

役場の玄関で見送ると、

「気になさらないでください。よくある事です。」

と、ニッコリ笑い、

児相の人たちは、

帰って行きました。

 

 

私は、

課長級のみなさんに

集まってもらいました。

 

のぼる君の保護の、

知恵を求めるためです。

 

 

その時です。

 

あの大地震が起きたのは、、、、

西日本大震災。

 

日本南西部、

 

沖縄、

先島、

台湾、

 

いいえ、

全世界が揺れ動きました。

津波は、

海のそばにあるすべての集落を

襲いました。

 

海は大波を立てて荒れ狂い、

空模様は、

おかしな感じになっていました。

すべての崖が崩れ、

すべての塀は

倒れました。

本震は数分で収まりましたが、

余震は繰り返し繰り返し、

何度も

やって来ました。

 

家族を波でさらわれた人々は、

行方不明者を探して、

危険な海岸線を

歩いていました。

私達、

児童家庭課は、

母子家庭と、父子家庭と、

一人暮らし世帯を訪ねて、

安否確認をすることとなりました。

 

道路は、

瓦礫と亀裂で、

通れなくなっていました。

 

しかし幸いに、

防災課の四駆を借りることが出来ました。

私達は、

先ず、

「のぼる君」のアパートを訪ねました。

 

 

さっきまでいた父親は、

何処にも

いませんでした。

 

居間には、

のぼる君の

冷たくなった身体が、

横たわっていました。

、、、、、、、、、、

救えなかった。

ごめんな、のぼる君。

 

ごめんな。

私達は医者ではありません。

しかし、どう見ても、

のぼる君の身体は、

家具の下敷きによる圧死ではなく、

全身のあざやケガから、

DVによるものと思われました。

 

 

 

 

 

この地震は世界規模で起きたらしく、

亡くなったり、

行方不明になった人の数は、

数百万人にもなることが分かりました。

 

震源地はイスラエルで、

戦争を仕掛けたロシアの連合軍は、

自滅した、

と聞きました。

 

政府は非常事態宣言を発令しました。

 

警察も消防も自衛隊も

人手が足りませんでした。

 

ですので、

私達役場も、

行方不明者捜索の仕事を

することになりました。

 

私達はまず、

のぼる君の遺体を

荼毘に付すことにしました。

 

のぼる君と面識のあった私達、

児童家庭課の面々は、

のぼる君に申し訳なくて、申し訳なくて、

みんな泣いていました。

のぼる君の父親とも、

母親とも、

結局、

その後も、

連絡は付きませんでした。

 

私達、児童家庭課の仲間だけで、

形だけの簡単な葬式を

あげました。

 

事情を聴いて、

清さんも、

式に参列してくれました。

 

きよしさんは、

村が障害者枠で採用した

非正規雇用の職員さんです。

 

清さんは、

のぼる君とは面識があったそうです。

 

のぼる君は以前に、

清さんの通うキリスト教会の

「子ども食堂」や「礼拝」に、

来たことがあるんだそうです。

のぼる君の葬儀は、

数名だけの、

寂しいものでした。

 

 

ところが、

その時です。

 

 

思いもかけないことが起こったのです。

 

 

まず、あのラッパのような?

「音」が、

聞こえました。

 

あれは、

外ででも

聞こえたそうです。

まるでその「音」に反応するかのように、

のぼる君の棺から「光」が、

 

溢れ出てきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある職員の証言 ( 前編 )

続く、、、、