前兆 

一体何から話せばいいんだろう。

あの出来事の前には、

たくさんの前兆と警告が、確かにあったんだ。

 

俺は定時制高校に通う学生だった。

 

人は苦手。

人がいる所も苦手。

できれば、誰にも関わらずに一生一人で生きていきたい。

そう願う、へんくつ者だったんだ。

 

中学でいじめに遭い、

不登校になって、

それで海のそばの高校に、通ってたんだ。

 

ある日、学校帰りに近くのコンビニに入ると、

地震が起きた。

 

地震は当時から、

よく起きるようになっていた。

 

地震という非日常は、

もう日常の一部になってたんだ。

震度4や5ではもう誰も驚かなくなってた。

 

ゴゴゴゴゴ、、、、

「まだ続くばぁ~? 長いな~。」

大きく揺れる店内でつぶやいた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ

ゴゴゴゴ

でも

でも、その日の地震はいつもと違っていた。

「うわー!」

ガシャーン!

もの凄い揺れが、来た!

床も壁も陳列棚も、全部飛び出して来た!

そして天井が降って来た!

「うわー!」

 

・・・・

どれぐらい気を失ってたんだろう。

俺の身体は瓦礫に挟まれてて

動けなくなってた。

 

暗い。

狭い。

動けない。

息が、

できない。

俺は恐怖で一瞬のうちに凍り付いた。

ヒー!!

「助けてくださいー! 誰かー!ここにいまーす!」

パニックになった!

心臓が異常なスピードで鼓動を打つ

ドンドンドンドンドンドンドン

「ハーハ―ハー」

 

誰かー

誰かいませんかー?

誰かー

誰かー

助けてくださいー!

何時間も叫び続けた気がする。

 

神さま助けてください。

神さま助けてください。

神さま助けてください。

あまりの恐ろしさ、祈りを口ずさんでいた。

 

神さま助けてください。

神さま助けてください。

神さま助けてください。

 

 

イエスさま助けてください。

イエスさま助けてください。

イエスさまー! 助けてくださーい!

 

いつの間にか、子どものころに信じていた神の名を呼んでいた。

 

「主の名を呼び求める者は、誰でも救われる」

ローマ書10章13節

 

 

「おーい、中に誰かいるかー?」

「あっ!はい!」

「ここにいます!ここにいます!助けてくださーい!」

「ちょっと待ってろよ~!」

よいしょ。よいしょ。よいしょ。

は~。助かって良かったなぁ~。

 

ありがとうございます。

ありがとうございます。

ありがとうございます。

 

膝がくずれながら、俺はお礼を言った。

安心したら、嬉しくて泣いてしまった。

 

「次、行くぞ!」

助けてくれた人たちと一緒に、

俺も救助活動を始めた。

 

「ここ!ここ! 助けて!」

瓦礫の下から人の声が聞こえた。

 

「みなさん!ここにもいます!」

「今助けてあげますからね!」

自分でも信じられないほど、声が出た。

 

鉄骨や瓦礫を持ち上げる。

うーん!

額から汗がボタボタと落ちる。

 

「すいません。そっち側、持ってください!」

「良いですか? 1,2,3!」

 

瓦礫をどかし、

その人の手をつかみ、力を込め、引っ張った。

もうすこしだ!

 

津波だー!!

逃げろー!!

「あぁー!」

海水はあっという間に瓦礫と、そこにいた人を飲み込みこんだ。

「あー!」

俺は波に流された。

「あぁ!!畜生ー!畜生!畜生!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ウップ!」

海水を飲み込んでしまった。

近くのビルの手すりに、しがみつけた。

そのまま跨いで、階段を上がった。

 

「あぁ~。」

助けられなかった。

あ~

 

目を見上げて絶句した。

町が、

水の中に沈んでいた。

あぁ~。

何でこんなことに、、、。

神さま、、、

神さま助けてください。

神さま助けてください。

神さま助けてください。

 

この地震は世界規模の出来事だった。

後に「世界同時大震災」と呼ばれるようになった。

 

アメリカではいろいろ大変なことが起き、

中東では大戦争が起こり、

そして今、世界中を地震と津波が襲った。

 

あ~、何ということだ。

でもこれはまだ

サインでしかなかったんだ。

 

本当の悲劇は、

まだ始まってもいなかった。

 

俺は昔は教会に行ってた。

けど辛いことがいっぱいあって、

神さまがいるなら、

何でこんな目に遭わせるんですか!?

って、教会に行かなくなったんだ。

 

 

でも神は何度も何度も

「戻っておいで」と、しるしを持って、

語りかけてくれていたんだ。

 

 

 

 

だから、目を覚ましていなさい。

あなた方は、その日、その時を知らないからです。

イエス・キリスト

マタイ福音書25章13節

 

 

あの時、

俺はまだまだ時間は残されている、

そう思ってたんだ。

 

終わりがそこまで来てるなんて、

想像もしてなかったんだ。

 

 

 

前兆

終わり