「 よく来たね~。」
「 先生、お久しぶりです(涙)。」
「 日本へようこそ! 」
「 神さまは、
必要を、満たしてくださったかい? 」
「 はい。
必要は全て、満たしてくださいました。
神さまは本当にすごい方です。
この神さまを知ることが出来て、
本当に嬉しいです。」
S先生の奥さんも、子どもも元気そう。
良かった。
「 教会を案内するね。 」
アメリカの教会とはまるで違う。
民家を改装した教会だった。
二階が礼拝堂になっていた。
天井がすぐそこで、圧迫感がすごい。
「 この屋根裏が、
竜一くんが、入学するまで泊まる場所ね。」
民家の屋根に、
十字架をつけるために
おお!増設された小さな部屋。
十字架の下で眠れるなんて、
何というしあわせ。
何という光栄!
イエスさま、有難うございます。
ん?
何か聞こえるぞ?
次の日、
早天(そうてん)祈祷会という、
朝の祈り会で目が覚めた。
「 初めまして。私はアメリカから来ました。
生まれはカルフォルニアですが、
育ちは沖縄です
新しく生まれたのもアメリカですが、
聖書を学ぶために日本に戻ってきました。
「テキサスで、
S先生に導かれて、クリスチャンになりました。
4月から、
奈良にある生駒聖書学院で、聖書を学びます。
みなさん、よろしくお願いします。」
パチパチパチ
「 ですから~! イエスさまは~~~~~! 」
日本を代表する教会の牧師が、
説教を始めた。
ビックリした。
声が大きいのだ。
そして何故か、眠くなってしまった。
説教中は、
寝ないでいるのが大変だった(ゴメンなさい)。
「 はい、食べて。次からは100円よ。」
礼拝が終ると、一階に移動した。
お昼にカレーライスを食べる。
「 すいません。」
「そっちは、ゴージャスですね。」
「 これは牧師先生のよ。」
「 え? みんな同じじゃないんですか? 」
「 牧師は神さまのしもべで、偉いのよ。みんなとは違うの。」
は~。
あれ?
俺がアメリカで信じたキリスト教と違うぞ?
俺はS先生の所で、
神の前に人はみな平等。
神さまは、
信者も、未信者も、同じように愛している。
一人一人が、
創造主である神さまの前にへりくだるべき。
そう学んだ。
けど、
ここでは、
神さまの下に主任牧師?
その下に副牧師?
その下に献身者?
その下に信者?
その下に未信者?
これって、
会社みたいだ。
組織を運営するって、
こう言う事に、どうしてもなるのかな?
俺がS先生の所で信じた
キリストの教会(からだ)とはちょっと違うな。
優しいS先生は、
大丈夫かな?
午後は、
スモールグループを作っての
「祈り会」が持たれた。
壮年は壮年同士、
婦人は婦人同士、
青年は青年同士、
学生は学生同士、
それぞれが持っている
「悩み事」を打ち明けて、
「それ」のために、みんなで祈る。
というのが「祈り会」だ。
カウセリングの場であり、
癒しの場であり、
出会いの場でもある。
う~ん。
素晴らしい。
理にかなっている。
これが教会か!
S先生が始めたサンアントニオ日本人教会は、
会員が数名しかいなかったので、
これには、感動した。
ん?
???
隣で集まっている婦人のグループから
鳴き声が聞こえる。
「 うう、うううう、ううううう、、、、」
あの女の人は、
何で、あんなに泣いているんだろう?
後で聞いて知ったが、
彼女のご主人は、
ある日突然「失踪」したのだった。
奥さんと赤ちゃんを残して失踪?
失踪?
どこへ?
何のために?
私はこの時、知らなかった。
北朝鮮に拉致され誘拐された日本人が、
毎年、何人も発生していることを。
北朝鮮は、
子どもも、
大人も、拉致誘拐して、
北朝鮮に連れて行ってしまうのだ。
なぜ?
何のため?
スパイとして教育するため、
工作員として利用するため、
工作員への日本語指導のため。
1987年、
北朝鮮の「韓国」乗っ取りは、
「 韓国の民主化 」という形で成功していた。
韓国、を、
乗っ取った、北朝鮮の、
次のターゲットは、
日本、となった。
「 ジョニー! 」
「 コミュニストには気をつけろよ! 」
え? コミュニスト(共産主義)?
自分の人生とは、
何の関係もないと思っていた共産主義(コミュニスト)
彼らは私たちの、
すぐそばに、
すでに深く深く入り込んでいた。
次の日、
生駒聖書学院の入学が持たれた。
つづく