ハーフ牧師がゆく 30話

「 よく来たね~。」

「 先生、お久しぶりです(涙)。」

「 日本へようこそ! 」

 

 

「 神さまは、

必要を、満たしてくださったかい? 」

 

「 はい。

必要は全て、満たしてくださいました。

神さまは本当にすごい方です。

 

この神さまを知ることが出来て、

本当に嬉しいです。」

 

 

S先生の奥さんも、子どもも元気そう。

良かった。

「 教会を案内するね。 」

 

アメリカの教会とはまるで違う。

民家を改装した教会だった。

 

二階が礼拝堂になっていた。

天井がすぐそこで、圧迫感がすごい。

「 この屋根裏が、

竜一くんが、入学するまで泊まる場所ね。」

 

民家の屋根に、

十字架をつけるために

おお!増設された小さな部屋。

 

十字架の下で眠れるなんて、

何というしあわせ。

何という光栄!

 

イエスさま、有難うございます。

 

 

ん?

何か聞こえるぞ?

 

 

次の日、

早天(そうてん)祈祷会という、

朝の祈り会で目が覚めた。

 

「 初めまして。私はアメリカから来ました。

生まれはカルフォルニアですが、

育ちは沖縄です

新しく生まれたのもアメリカですが、

聖書を学ぶために日本に戻ってきました。

 

「テキサスで、

S先生に導かれて、クリスチャンになりました。

 

4月から、

奈良にある生駒聖書学院で、聖書を学びます。

みなさん、よろしくお願いします。」

 

パチパチパチ

 

 

「 ですから~! イエスさまは~~~~~! 」

 

日本を代表する教会の牧師が、

説教を始めた。

ビックリした。

声が大きいのだ。

 

そして何故か、眠くなってしまった。

説教中は、

寝ないでいるのが大変だった(ゴメンなさい)。

 

 

 

「 はい、食べて。次からは100円よ。」

 

礼拝が終ると、一階に移動した。

お昼にカレーライスを食べる。

 

 

「 すいません。」

 

「そっちは、ゴージャスですね。」

「 これは牧師先生のよ。」

「 え? みんな同じじゃないんですか? 」

「 牧師は神さまのしもべで、偉いのよ。みんなとは違うの。」

は~。

 

 

あれ?

俺がアメリカで信じたキリスト教と違うぞ?

 

俺はS先生の所で、

神の前に人はみな平等。

 

神さまは、

信者も、未信者も、同じように愛している。

一人一人が、

創造主である神さまの前にへりくだるべき。

そう学んだ。

 

けど、

ここでは、

神さまの下に主任牧師?

その下に副牧師?

その下に献身者?

その下に信者?

その下に未信者?

 

これって、

会社みたいだ。

 

組織を運営するって、

こう言う事に、どうしてもなるのかな?

 

俺がS先生の所で信じた

キリストの教会(からだ)とはちょっと違うな。

 

優しいS先生は、

大丈夫かな?

 

 

 

午後は、

スモールグループを作っての

「祈り会」が持たれた。

壮年は壮年同士、

婦人は婦人同士、

青年は青年同士、

学生は学生同士、

 

それぞれが持っている

「悩み事」を打ち明けて、

「それ」のために、みんなで祈る。

というのが「祈り会」だ。

 

 

カウセリングの場であり、

癒しの場であり、

出会いの場でもある。

 

う~ん。

素晴らしい。

理にかなっている。

これが教会か!

 

S先生が始めたサンアントニオ日本人教会は、

会員が数名しかいなかったので、

これには、感動した。

 

 

ん?

???

 

隣で集まっている婦人のグループから

鳴き声が聞こえる。

「 うう、うううう、ううううう、、、、」

 

 

あの女の人は、

何で、あんなに泣いているんだろう?

 

後で聞いて知ったが、

彼女のご主人は、

ある日突然「失踪」したのだった。

奥さんと赤ちゃんを残して失踪?

 

失踪?

 

どこへ?

何のために?

 

 

私はこの時、知らなかった。

 

北朝鮮に拉致され誘拐された日本人が、

毎年、何人も発生していることを。

 

北朝鮮は、

子どもも、

大人も、拉致誘拐して、

北朝鮮に連れて行ってしまうのだ。

なぜ?

何のため?

 

スパイとして教育するため、

工作員として利用するため、

工作員への日本語指導のため。

 

 

1987年、

北朝鮮の「韓国」乗っ取りは、

「 韓国の民主化 」という形で成功していた。

 

 

 

韓国、を、

乗っ取った、北朝鮮の、

次のターゲットは、

日本、となった。

 

 

「 ジョニー! 」

「 コミュニストには気をつけろよ! 」

 

え? コミュニスト(共産主義)?

自分の人生とは、

何の関係もないと思っていた共産主義(コミュニスト)

 

彼らは私たちの、

すぐそばに、

すでに深く深く入り込んでいた。

 

 

 

次の日、

生駒聖書学院の入学が持たれた。

 

 

 

 

 

つづく