ハーフ牧師がゆく 35話

私たち神学生は、

実習で愛知県のどこかの山村にやって来た。

3泊4日で教会堂に泊まり込み、

二人一組で地域の人に伝道するのだ。

 

 

最初の日がやって来た。

私の相棒は仲村兄弟という人だった。

 

 

私より二十歳ぐらい年上で、いつもニコニコしているまじめな方だった。

で、結果はどうかというと、

だいたい門前払いである。

 

 

 

二日目がやって来た。

相棒は有泉兄弟。

65歳で最年長の神学生だった。

 

「こんにちは~」勝手にドアを開けて玄関に座っている。

「奥さん美人だねぇ~。」

まるで、知り合いにでも会ったかのように、

親し気に、要件を伝えていく。

「はい、では伺います。」「よろしくお願いします。じゃぁ。」

仕事を成功させると玄関を閉める。

 

凄い。

次から次へと、心の扉が開かれてゆく。

 

後から知ったが、

有泉兄弟は元アマレスの全国チャンピオンで、

公文か学研か忘れたが、そのセールスで全国一だったという。

 

凄いわけだ。

訪問相手にスキを与えず、

少し強引すぎる手法は、

押し売りにも見えるのだが、

結果は出している。

 

しかし、よく見ると犬を飼っている家は訪問しなかった。

 

「何で犬のいる家は訪問しないんですか?」

 

「危ないからさ。」

 

「じゃぁ、僕にやらせてください。」

 

「やめときなよ。」

 

「大丈夫です。僕、こう見えても戌年ですから。」

 

 

吠えたける犬を横目に、

玄関ゲートを開いて、玄関ドアに近づいた。

 

ガブ!

「痛~い!」

 

人差し指に、

犬が思い切り噛みついていた。

 

指の詰めがはがれ落ちている。

血が噴き出していた。

 

 

「だから言ったでしょう?」

 

 

 

近くの公園の水道で、

傷を洗ってハンカチで巻いてくれた。

 

「飲みなよ。」

 

ジュースのビンを渡された。

 

秋風が吹く木陰の下、二人でベンチに座ってジュースを飲んでいた。

 

 

「一息ついたら、また頑張ろう。」

 

「はい。」

 

忘れ得ぬ神学生、

 

有泉兄弟。

 

 

きっと彼の就任する教会は、

大成するんだろうなぁ。

 

と思ったが、

 

彼は卒業後、

すぐに天に召された。

 

 

「わたしたちの中には、だれ一人自分のために生きる者はなく、だれ一人自分のために死ぬ者もいません。わたしたちは、生きるとすれば主のために生き、死ぬとすれば主のために死ぬのです。」

ローマ14:7

 

悪魔は神の人をねらっているのか。

覚悟しなければ、、、

 

 

ハーフ牧師がゆく つづく