ハーフ牧師がゆく 37話

「アカン! 絶対にアカン!」

 

 

民主化しようとする中国の若者たちを応援しようと、

ジョン先生らと一緒に、

北京の天安門広場に行くことの許可を、

学院長に願い出た。

 

が、

猛烈に反対された。

 

「アカン! 絶対にアカン!」

 

 

ということで私は、

中国の天安門に行けなくなった。

 

ジョン先生たちを乗せたフェリーは、

大阪の港から中国に向けて出発した。

 

 

 

1989年4月、

中国の若者たちによって始まった民主化運動は、

5月末には世界中を席巻する大ニュースとなっていた。

 

歴史が変わる。

誰もがそう思った。

 

 

しかし

それは起きなかった。

6月4日未明、

集まった市民や民衆のデモに対して、

中国共産党は人民解放軍を投入し、

デモ隊を力で排除し始めた。

 

 

 

機関銃や戦車が投入され、

数千人から一万人の死者が出た、

と連日報道されていた。

 

当局に逮捕されて収容施設に送られた若者も相当数いるらしい。

これが世にいう「天安門事件」である。

 

ジョン先生たちは無事に帰って来た。

 

 

危ないところだったらしい。

白人の、いかにもアメリカ人らしい外観のおかげで、

検問所も難なく通過できたらしい。

 

私もハーフだが、

メキシコ系アメリカ人なのでもし私がそこにいたら、

中国の民主化を求める若者と勘違いされ、

当局に拘束されていたかもしれない。

考えたらゾッとした。

 

連行された中国の若者たちが心配だった。

 

イエスさま、

捕らわれた若者達を、

どうかお守りください。

 

共産主義国とは、

何と恐ろしい国家体制か。

 

ところで、

このような未来を予見していたかのような栄院長の見事な見識と判断には、

畏敬の念を抱いてしまった。

 

神の人とは、

未来が見えるのだろうか?

 

神学生の私が中国で拘束されないように、

中国行きを反対したのだろうか?

 

栄義之院長は、

毎朝5時から始まる、

学院の早天祈祷会の前に、

 

祈りながらイエスさまについて書かれたチラシを、

地域に配っていた。

 

祈りながら一軒一軒配布していた。

すごい。

神学校の院長なのに、

忙しいハズなのに、

誰よりも聖書を読み、

誰よりも祈り、

誰よりも伝道し、

誰よりも愛情深く、

誰よりも情け深かった。

 

栄義之院長。

忘れ得ぬ大恩人。

忘れ得ぬもう一人の私の師。

 

ハーフ牧師がゆく つづく