ハーフ牧師がゆく 7話

 

「アメリカー? 」

 

 

と、その前に、

話しを一時間ほど前に戻そう。

 

 

高校を中退して自信を無くした私に、

スーパーの店長も副店長も優しかった。
 「うちに就職したら良いよ!本採用に成れるように、本社にかけ合ってやるよ!」

「お前は真面目だから大丈夫。俺たちの推薦もあるし、直ぐ本採用だよ。」

すっごく、うれしかった。

 

 

「お母さん。店長がね、本採用にしてあげるって!」

きっと母も喜んでくれるハズだ。

そう思った。

ところが違った。

「ジャーニー。

お前のお父さんはアメリカ人だ。

お前が生まれた国もアメリカだ。

お前は、一度自分が生まれた国に行って、自分の国を見てお出で!

そしてお前のお父さんを捜して、会っておいで。」

「へっ?アメリカ? 俺が?」

俺はびっくりした。

 

アメリカに行く、というのは、今と違って本当に大変なことだった。

当時は、アメリカは遠い遠い、本当に遠い場所だった。

例えていうなら、今なら、「月に行く」ような感じかな?

一般人でもアメリカに行くのは大変な時代だった。

ましてやうちはビンボーボンビーの母子家庭の貧困家庭だ。

俺なんかがアメリカなどへは、一生行けるハズはない、そう思っていた。

「お前の父親は、元アメリカの海兵隊員。」

元海兵隊員と聞いて私は映画「ランボー」を思い出した。

筋肉隆々のシルベスタースターローンだ。

お父さんは、ランボーみたいな人?

「今はね、50トントラックのドライバーをやっているって。」

「50トントラックのドライバー?」

そこら辺を走っているダンプカーは10トンである。

その5倍も大きなトラックの運転手しているという。

 

私はすぐにオーバーザトップの主人公

シルベスタースターローンを思い浮かべた。

 

間違いない。

俺の親父は、シルベスタースターローン(みたいな人)だ!

「行きたいなぁ!会いたいなぁ!」

 

 

 

 

数日後、

母は在沖アメリカ総領事館に、私を連れて行ってくれた。

「スゲー、なにここ?」

監視カメラに防弾ガラス。

綺麗な芝生に、、、

 

 

「ソレデハ、コノホンニ、テヲオイテ、ミギテヲアゲテ、センセイシテクダサイ。」

せんせい? 右手? なにこの本?

「ミギテヲ、アゲテクダサイ。」

「は、はい?」

 

「ソノホンニ、テヲオイテクダサイ。」

「はい。」

優しそうなアメリカ人をまねて、私は宣誓した。

アメリカのパスポートを、

新しくしてもらった。

 

あの本は一体何だったんだ?

 

数週間後、

那覇空港国際線に「チームでんでん」が見送りに集まってくれた。

「二度と帰って来るなよー」「日本に来るなよー!」

「じゃぁなー!みんな! 元気でなー!」

飛行機は飛び立った。

いったいあの本は何だったんだ?

世界一の大国アメリカ。

「あの本」には、その答えがあるのだろうか?

私の人生を変える「あの本」との出会いは、

今思えば、あの時が最初だった。

 

希望と不安を胸に、飛行機は飛び立った。

父を探して3千里の旅へ。

さぁ、出発だ。

 

 

 

 

 

もう知っている人もいると思いますが、

あの本は「聖書」です。

 

今では考えられないことですが、

当時は聖書に手を置いて、

手を上げて、心を神にむけ、誓いを立てて宣誓していました。

 

アメリカが国としてイエスキリストを信じていた

素晴らしい時代のことです。

 

 

母は多額の借金して渡米の為のチケット代を工面してくれた。

母は、この借金を一生負い続けることになる。

そして最後は、借金が原因で死んでく。

 

それでも、

それでも母は、借金してでも何とかして、

息子を救いたかったのだと思う。

息子に「生きる希望」や「将来の夢」を与えたかったのかもしれない。

 

高校を中退した私は本当に暗かった。
いや、その前から暗かった。

私は思春期の頃から、「生きる理由」が分からず苦しんでいた。

母はなんとかして、

そんな私を救いたかったのかもしれない。

 

 

お母さん、

ゴメンね。

 

お母さん、

ありがとう。

 

 

 

 

ハーフ牧師がゆく

続く