LAX? ラックス石鹸? いいえ。
これはアメリカの空の玄関口「ロサンゼルス国際空港」を略した看板です。
しかし私がこの看板の意味を知るのは、
その後、20年ぐらい経ってからのことだった。
私は、国際線と国内線は別の建物である、
ということが分からず、
国際線で国内線を探して、しばらくウロウロしてた。
すると日本語で語りかけられた。
「コレ、アナタニダケ、アゲル。イイヨ、モラッテ」
「おー! 日本語。 本当に?」
怪しいインド人?に小冊子をもらうとこう言われた。
「20ドルネ!」
あっけにとられた私は、見事にぼったくられてた。
いろんな意味でこう思った。
「さすがアメリカ。」
数時間して飛行機は、
テキサス州・サンアントニオに着いた。
到着口を出ると、直ぐに私はランボー(みたいな人)を探した。
ところが向こうから、
汚いメタボ体形の、メキシコ人男性が近づいてくる。
写真を見てキョロキョロしているあのおじさんが、ぼくのお父さん?
私は後ろを振り向いて、
向こう側を探したが、他に人捜しをしてる人はいない。
ふり返ると、そのメキシコ人は私の目の前にいた。
目が合った。
彼は、写真を見て、私を見て、
写真を見て、私を見て、
写真を見て、私を見て、こう言って、抱きついて来た!
「オー・マイ・サン!(我が息子よ!)」
私は叫んだ「オー・マイ・ガー(なんてこった!)」心の中で。
空港から数十分の住宅街に、父の白い家はあった。
今考えたらたいした家ではないのだが、
その時は「父は自分の家を持っているのか!」
凄い!と思った。
お金持ちなんだなぁ。と感心した。
父の家族は、父と、父の新しい奥さんのジョーと、
奥さんの連れ子のキャリーと、
私と異母兄弟の弟フランクの4人暮らしだった。
英語で彼らはずっと私に何かを話しかけていたけど、
何を言っているのか、さっぱり分からなかった。
この家族は4人暮らしであるが、
駐車場には、二人乗りのトラックが二台あるだけだった。
ここら辺も、
「さすがアメリカ。」と思った。
次の日、父は私とフランクを連れて、
サンアントニオの観光地に行ってくれた。
一生懸命に何かを説明してくれるのだけど、
意味は、分からない。
そのうち、分かるようになるんだろうなぁ。
私がここに来た初日に覚えた英語は「タイヤー」だった。
Tired
何度も「タイヤ?」「タイヤ?」と聞かれ、
頭の中で車の[タイヤ?]を連想したが、
それが「疲れたか?」という意味だと、なんとなくその日には理解した。
しばらくドライブして、軍の基地に入った。
「こんにちは。初めまして。」
「あっ。どうも、・・・初めまして。」
父は、父の友人だという日本人の自衛官に私を紹介してくれた。
私は日本語に「ほッ」とした。
父はしばらくその自衛官と話をしてたが、
車に乗って去って行った。
その晩、私はその自衛官の家に行った。
家族を紹介され、一緒に食事をした。
外のテラスに出て、
プールサイドでビールを飲みながら語り合った。
(もちろん私はコーラです。)
今でも忘れえぬ、素晴らしい夜のひと時だった。
私は私が嫌いであった。
私には価値がない。
私には生きている価値はない。
自分のことをそう思っていた。
ところがこの自衛官は、
私のような価値の無い者のために、
時間を割いて丁寧に語り合ってくれた。
今思い出しても、涙が出る。
在り難い。
〇〇さん。
ありがとうございます。
この場を借りて、お礼を言います。
本当に感謝しています。m(__)m
「ジョニー君は、何がしたいの?
ジョニー君は、何が出来るの?」
何がしたいか? 何できるか?
私の頭に、漫画「エリヤ88」のパイロットが浮かんだ。
俺はパイロットになりたいか?
・・・・分からない。
次に漫画「タイガーマスク二世」が浮かんだ。
俺はプロレスラーになりたいのか?
・・・・分からない。
私は何がしたいんだ? 私は何になりたいんだ?
・・・・・
でも、それが分からないから、
俺はここに来たんじゃないか?
しばらく考えてこう言った。
「あの~。人は何のために生きているんでしょうか?
・・・・
生きていることの意味って、何なのでしょうか? 」
「・・・・・」
彼はしばらく考えてた。
そして言葉を選んで、ゆっくりと哲学的な事を話し出した。
お酒も入っていたからか、夜遅くまでお話ししてくれた。
人生とは何なのか?
人は何のために生きるのか?
人は死んだらどうなるのか?
その方は素晴らしい自衛官である。
今でもその人と過ごした時間を、
私は決して忘れない。
私のような愚かで馬鹿な者のために時間を割いてくださった。
その方と、その方の奥さんに、
本当に本当に感謝している。
父が駐車場で待っていた。
お礼を言って、そこを出た。
在り難かった。
在り難かったが、
彼の答えは、私を納得させるものではなかった。
車が夜の道を走っていく。
ガロロロロローン。
「ペラペラペラペラ?」
「はぁ?」
言葉の通じない父と子。心の通じない人と人。
アメリカに来れば、人生の答えが分かるかと思ったが、
人生に意味など、ないのかな?
「ペラペラペラペラ~?」
「は?」
「ペラペラ~?」
「は?」
「ペラペラペ~?」
「は?」
「ペラ?」
「・・・・・」
ハーフ牧師がゆく
続く