ハーフ牧師がゆく 9話

この男の子の名前はフランク。私の実の弟だ。

まぁ、異母兄弟だけどね。

 

母親は違うが父親が一緒。

出会ったときから言葉は通じないが、

同じ男だからか、それともお互いに兄弟が欲しかったからか、

直ぐに仲良くなった。

住む国は違っても、

私たちの交流は続いた。

私は仕事でアメリカに行ったときには必ず弟を訪ねた。

弟は高校を卒業したら海兵隊員になっていた。

そして沖縄にも来た。

フランクが沖縄に来たときは、

お姉ちゃんのニーナにも会わせた。

3人とも兄弟だ。

異母兄弟だけど。。。

 

今、彼は退役して冷蔵庫やエアコンの修理をしている。

子ども3人の良い親父で良い夫だ。

今から話すのは、

私に取っても、

そしてフランクにとっても、

少し痛い思い出である。

 

 

 

 

 

 

 

 

17歳で父を訪ねて渡米した私は、

生まれて初めて自分の父親に会った。

父が手続きしてくれて、

私は新学期から、

地元の高校に入学することが決まった。

 

 

英語が分からないのに英語で授業を受けるのだ。

あぁ~不安。

でも、楽しそう。

 

 

 

 

 

私がアメリカに来て、

2週ほどたった頃に、

あの事件は起こった。

 

 

 

 

 

フランクが泣いている。

「フランク?」

「どうした?」

お母さんに怒られたんだろうなぁ。

フランクの母親は、

気性の激しい人だった。

 

「フランク。スマーイル」

あ、泣いている。

 

励ましたいが、

言葉が出てこない。

「フランク?」

私は、

指で突っついたりする。

こちょこちょしたりする。

笑わない。

 

彼が笑ってくれるのを

期待した。

そうだ。

以前、彼が笑ってくれた技を思い出した。

 

足の裏を持ち上げる、

という技だ。

 

チームでんでんの仲間内では、

人気のある「おちょくり」技、

であった。

 

「どうだ。ほれほれ。」

あれ?

笑わない。

まっ、いいか。ほっとくか。

 

 

 

 

 

 

この技が原因で、

大変なトラブルになる。

 

 

 

「ジョーニ―!」

「ハイ?」

ジョーがバットを持って、

部屋に入って来た。

バット?

ジョーは何かを叫んでいる。

Fというキーワードを連発している。

 

え?

俺、何かした?

 

何を怒ってんだ?

フ〇ック!

という言葉を、

すごく連発している。

ん~。

意味が分からない。

すると突然、

ジョーはバットで壁を叩いた。バン!

フ〇ック・ユー!

 

はぁ?

ビックリ。

 

何で?

 

 

理不尽に怒られて続けていると、

俺も腹が立ってくる。

 

何で俺を怒る?

俺が何した?

 

お前は何を怒っているんだ?

 

私の顔色が変わったのを見て、

ジョーの罵りは、

激しさを増した。

私はキレた。

「やかましー!日本語でしゃべらんかー!」

近くにあったテーブルをたたき割る。

ジョーは姿を消した。

 

数分後、

外にパトカーが集結した。

 

ウーウーウー

すげ~。映画みたいだ。

嬉しいような、

怖いような、、、

私はお巡りさんを見ると、

両手を添えてお巡りさんの前に

差し出した。

「ノー。ノー。ノー。」

お巡りさんは苦笑いで否定する。

 

ジョーはその間も「フ〇ック・ユー!」を叫び続けている。

 

一体何なんだ?

 

しばらくして父が職場からかっ飛んできた。

 

心配そうな顔で質問してくる。

 

でも何を言っているか分からない。

 

私も何があったか分からないのだ。

 

ペラペラペラ?

何でこうなったか分からないけど、

俺が悪いんでしょ?

 

私は自分を罰するために、

自分を殴る。

「怒った」俺、が悪いなぁ。

俺が悪い。

 

でも、どうしたら分かってもらえるんだろう?

 

どうしたら分かり合えるんだろう?

 

悲しい。

 

「この家から出て行け!」(みたいな雰囲気)

父は外に指をさす。

 

え?出て行け?

何で?

俺、何した?

 

何で?

何で?

俺、何処に行くの?

 

俺、お金ないよ。

俺、英語分らんよ。

俺、この国を知らないよ。

俺、あんたの息子だよ

(それも長男)。

言葉が通じても、

心が通じるとは限らない。

 

でも、言葉が通じなければ、

心はもっと通じない。

 

育った環境や文化が違えば、

もっともっと

人はわかり合えない。

 

後で分かったことだが、

ジョーは、

私がフランクを蹴って泣かした、

と思っていたらしい。

 

 

 

タクシーがやって来た。

野次馬も集まっている。

 

俺に何処に行けというんだ?

私は自分の荷物を

トランクに積んだ。

お別れの時が来た。

 

今朝とは、

状況がが全く変わってしまった。

 

人生一寸先は闇、

とは

こういうことを

言うんだな。

 

父とも

フランクとも、

ジョーともキャリーとも

お別れだ。

 

何で?

去らなきゃいけないの?

 

あ~。

悲しい。

 

 

 

 

で、

このタクシー何処に行くの?

 

空港かな?

 

でも、

お金ないよ。

 

取りあえず町の外れに連れて行って

俺を下ろすのかな?

私はこれから自分が何処に行くかより、

父が私を捨てた。

という事のほうが、

 

本当に、

本当に、

悲しかった。

 

 

たとえ血がつながっていても、

親が子を愛するとは、

 

限らないのだ。

 

 

 

親に捨てられた子は、

悲しい。

本当に悲しい。

 

 

神さま、

親に見捨てられた子どもたちを、

助けてください。

 

 

助けてください。

 

 

 

お願いします。

 

 

 

 

 

 

言葉が通じないと、

心を通じ合わせるのは

難しい。

 

でも言葉が通じても、

心が通じるとは

限らない。

 

イエスさまだけが、

人と人との壊れた関係を、

修復できる

唯一の神さまだ。

 

この方が私には必要。

 

 

今でも

必要。

 

 

そしてこの方は、

 

 

あなたにも

 

 

必要。

 

私はそう

 

思う。

 

 

 

もし誰かと分かり合えなくて、

あなたが苦しんでいるなら、

 

どうか勇気を出して、

イエスさまのところに

 

行ってみて。

 

 

試してみて。

 

 

彼は、

 

待ってるよ。

 

 

 

 

 

 

 

ハーフ牧師がゆく

続く